技術面から見た、仮想通貨リップル(XRP)の将来性と課題点

アルトコイン
この記事は約12分で読めます。

リップルの技術

本記事では、リップルの技術的な特徴と課題、またリップルについての様々な風説まで踏み込んで解説します。

リップルは時価総額で上位を維持している仮想通貨(暗号資産)ですが、リップル社によるXRPの大量保有など分散化の点で課題を抱えていることも大きな特徴となっています。

目次
  1. リップルに関連する言葉の整理
  2. XRP Ledgerの使用言語と開発環境
  3. 技術面から見た優れている点
  4. XRP Ledgerの課題

リップルに関連する言葉の整理

仮想通貨のリップルは一般的に「XRP(ティッカーもXRP)」と表記され、「Ripple」と表記された場合は、会社を表します。

XRPをネイティブトークンとするDLT(分散型台帳技術)を「XRP Ledger(XRPL)」と言います。

Ripple(会社)はXRP Ledgerを利用した決済ネットワークサービスである「Ripple Net」を提供しています。

また、「Xpring」はRippleの子会社で、XRPやXRP Ledgerをを活用したプロジェクトへの投資、買収を通じたXRPの利用拡大・認知度向上を目的としています。

XRP Ledgerの使用言語と開発環境

XRP LedgerはC++を使って開発されているプロジェクトです。

C++は処理が速く、Adobe Systems、Amazon、Paypal、Chromeなど多くのソフトウェアがC++で構築されています。

また、ビットコインやイーサリアムと違って中央集権だ、などと言われることの多いXRP Ledgerですが、XRP Ledgerもビットコインやイーサリアム同様オープンソースで、誰でもコードを見たり開発に貢献したりすることが出来ます。

参考:Github

なぜ中央集権といわれるのか、Ripple社がどの程度関わっているのかについては後ほど詳しく説明します。

技術面から見た優れている点

XRP LedgerとXRPの基本的な情報

リップルは一般的に国際送金の高速・低コスト化のためのプロジェクトとして知られていますが、開発を主導するRipple社はRIpple Netのようなソリューションを使って価値の取引を瞬時に行うことができる世界、すなわち「価値のインターネット(Internet of Value : IoV)」の実現を目指しているようです。

参考:Ripple社インサイト | 価値のインターネット:何を意味し、どのような恩恵を人々に与えるか

また、「ブロックチェーンを使っていない」「中央集権である」と言われることも多いです。以下では、技術や仕組みの観点からこれらの言説についても確認していきます。

XRP Ledgerの仕組み

「ブロックチェーンを使っていない」とよく言われるXRP Ledgerですが、その台帳のデータ構造はビットコインと大きく違いません。

一方でネットワーク参加者間での合意のとり方は大きく違い、XRP Ledgerでは限られた少数の人が投票を行い8割以上賛成すれば合意となります。以降ビットコインの仕組みと比較しながら説明していくので、ビットコインの技術的な仕組みについてはある程度知っていると読み進めやすいです。

以下の記事にてビットコインの技術を解説しています。

参考:技術的観点からみたビットコインのメリットとボトルネック

データベースの構造

データベースの構造はビットコインとよく似ています。

ビットコイン等でブロックと呼ぶ、トランザクションデータが集められたものをXRP Ledgerではレジャー(台帳)と呼びます。 各レジャーにはトランザクションや各アカウントの残高などの情報が記録されています。(ビットコインでは各アカウントの残高は記録していないので、その点は違うところです。)

1つ前のレジャーのハッシュを参照して新たなレジャーが作成されるのもビットコインと似ています。

一つ前のレジャーのハッシュを参照して次のレジャーが作られる
引用:XRP Ledger公式ページ

一つのレジャーの構造
引用:XRP Ledger公式ページ

合意のとり方(コンセンサスアルゴリズム)

データベースの構造はビットコインと似ていましたが、大きく違うのは「どうやって追加されたデータを検証し、それについて合意をとるか」です。

ビットコインでの合意のとり方

ビットコインでは「PoW」と「一番長いチェーンが正しい」というルールで合意を取っています。

マイナーが新たなブロックに含めるトランザクションについてそれぞれ検証しPoWによる計算をして新たなブロックを作成、その内容に合意すれば次のブロックが繋げられる、ということが繰り返されます。 そのブロックの内容に合意しない場合は、別のブロックに新たなブロックをつなげます。

「一番長いチェーンが正しい唯一のチェーンである」というルールが定められているため、多くのマイナーが正直者であれば正しいチェーンが一番長くなります。

チェーンをわざと分岐させてもその後が続かないのでそのようなことをする動機は生じません。

「多くのマイナーが正直者でない状態」が51%攻撃と呼ばれるもので、過半数の計算資源を一人が握ると他のマイナーの意向に関わらず一番長いチェーンを作ることができるようになります。

XRP Ledgerでの合意のとり方

一方XRP Ledgerでは、バリデーターというトランザクション等の検証を行う人達の合意を以てネットワーク参加者全体の合意としています。

より細かく説明すると、XRP Ledgerのネットワーク参加者はバリデーターの中から信頼できそうなバリデーターを複数選択してUNL(Unique Node List)とし、UNLの内8割以上が合意すればそのレジャーの内容は正しいものとして確定し、それ以降変更されることはありません。

基本的にバリデーターには誰でもなることが出来ますが、誰が信頼できるバリデーターかを判断するのは難しい(面倒)ため、Ripple社が「推奨UNL」をデフォルトで設定しています。

Ripple社が提供する「推奨UNL」は誠実に行動すると期待される企業や大学などの機関で構成されていて、Ripple社が過去のバリデーターとしての振る舞いを監視して適切なものをリスト化しています。

バリデーターやUNLについては「3.リップルの課題」にてもう一度触れます。

なお、公式ドキュメントではリップルのコンセンサスアルゴリズムについてPoC(Proof of Consensus)という表記は無く、「(XRP Ledger)コンセンサスプロトコル」と記載されています。

バリデーターのメリット

ビットコインにおいてマイナーは、トランザクション検証の対価として新規発行されたBTCを貰っていましたが、XRP Ledgerのバリデーターに金銭的な報酬はありません。

バリデータとなる企業や機関は広報やネットワークの健全性の促進といったメリットのために検証作業を行います。 PoWのような、多大な計算資源を使うわけではないので、バリデーターとして活動するのにそこまで大きなコストはかからないのです。

また、ビットコインではPoWの問題が10分程度で解けるように設定されているため、新規ブロックは約10分毎に作られていましたが、そのせいで単位時間に処理できる取引の数は大幅に制限されていました。

XRP Ledgerではそれがないため、数秒毎に合意が取られ新たなレジャーが追加されていきます。 ビットコインが1秒間に処理する取引数が7件なのに対し、XRP Ledgerは1500件と圧倒的な処理速度を持っています。

また、visaカードと同等(秒間最大56000件)までスケールすることも可能と言われています。

「XRP Ledgerはブロックチェーンではない」

よく、「XRP Ledgerはブロックチェーンではない」と言われます。

その主張の根拠として、上記合意のとり方などビットコインのブロックチェーンとの違いが挙げられることが多いです。

日本ブロックチェーン協会によるブロックチェーンの定義

議論の土台を作るために、日本ブロックチェーン協会(JBA)によるブロックチェーンの定義を見てみましょう。

  1. (狭義)ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。
  2. (広義)電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。

まず、狭義の方を見てみましょう。「不特定多数のノードを用い」という部分に着目すると、XRP Ledgerでは合意を取るにあたって不特定多数のノードを用いていないので、(狭義)ブロックチェーンではないでしょう。

一方、広義の方を見てみると、前半のデータ構造については上述のようにビットコインと似たようなものであり、後半についてもバリデータを始めとする多数のノードが保持しているため、定義に当てはまっている「(広義)ブロックチェーン」と言えそうです。

Ripple社の見解

Ripple社はどう捉えているのでしょうか。

Ripple社の公式ホームページを見てみると、ユーザーの声としてSiam Commercial Bank(サイアム商業銀行;タイの大手銀行)のコメントが紹介されています。

Siam Commercial Bankは、Rippleの先進的なブロックチェーンネットワークソリューションを使って、リアルタイムの送金を顧客に提供するアジア初の銀行であることを誇らしく思います。

また、Ripple社のビジョン「価値のインターネット」の説明ページでは

私達はブロックチェーンの力を使って、世界中に摩擦のない送金エクスペリエンスを提供します。

とあります。

これらの記載から、Ripple社は自社ソリューションで利用しているXRP Ledgerがブロックチェーンであると認識していると考えるのが自然でしょう。

XRP Ledgerの課題

「XRP LedgerはRipple社の中央集権である」というのもよく言われることです。

中央集権であることのデメリットは

  • Ripple社による台帳の操作、XRPの価格操作
  • Ripple社の倒産に伴ってXRP Ledgerも終わる

これらの可能性があることです。

このような状態ではユーザーはRipple社を信頼する必要があり、ビットコイン等仮想通貨の思想に共感しているユーザーには受け入れられないでしょう。

以下、これらについて事実とRipple社の取り組みを紹介していきます。

Ripple社が推奨するUNL

2018年頃までは推奨UNLのバリデーターはすべてRipple社が運用するバリデーターでした。 検証者がすべてRipple社自身では中央集権と言われても仕方ありません。

しかし、それ以降はRipple社以外のバリデーターを推奨UNLに含めRipple社のバリデーターを外す動きを続け、2020年5月時点では推奨UNL全36バリデーター中、30がRipple社以外のバリデーターとなっています。

参考:XRPL Explorer

バリデータになること自体はRipple社による選別などは無く、誰でも可能です。

しかし、推奨UNLに選ばれるためには

  • ネットワークへの接続時間(ダウンタイムが少ないほど良い)
  • コンセンサスへの合意度(他の多くのバリデーターと同じ判断をしているほど健全と考えられる)
  • 通信速度や身元の確かさ

等の基準をクリアする必要があるようです。

バリデーター自体の多くがRipple社では無いといえ、推奨UNLの選定はRipple社が行っているためRipple社との金銭のやり取りや利害関係などを訝しむ声もあります。

Ripple社によるXRPの保有

仮想通貨XRPは誕生した瞬間に上限の1000億XRPが発行され、新規発行はされません。 2017年12月時点で1000億XRPの内630億XRPはRipple社が保有していました。

しかしこの状態ではRipple社のXRP大量売却による大幅な価格下落リスクがあるため、彼らは保有分のうち550億XRPを自由に売却できないように(ロックアップ)し、2018年以降毎月10億XRPずつロックアップを解除しています。 ロックアップが解除された10億XRPはすべて売却されるわけでは無く、その月に売却されなかった分については再びロックアップしています。

2019年10月時点で500億XRPがロックアップされていて、最近はより一層販売額を減らしていることが報告されています。

関連Ripple社の仮想通貨XRP販売額、前年同四半期比で「99%減」:Q1最新報告書

また、Ripple社がXRP Ledgerを所有・管理しているわけではないとはいえ、Ripple社は関連する送金サービスや保有するXRPの売却により利益を出しているため、XRP Ledgerの開発を主導する経済的動機があるります。

仮にRipple社が倒産した場合でも、XRPやXRP Ledgerが無くなるわけではありませんが、強力な舵取りが消失したシステムが存続できるのか、疑問は残ります。

コミュニティ分裂に伴うハードフォークができない

中央集権的であることとは関係無く、XRP Ledgerの仕組み上の課題です。

多くの通貨で可能なハードフォーク

ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨の特徴の一つに「ハードフォーク」があります。

これはThe DAO事件の後のイーサリアム(ETH)とイーサリアムクラシック(ETC)のように、一つのブロックチェーンが分岐して新たな通貨が生まれることを指します。

The DAO事件では当時の価格で約52億円相当のETHが盗まれましたが、事件への対応を巡ってコミュニティが「ハッキング自体を無かったことにする」という派閥と「そのままにする」という派閥に分裂してしまい、前者をイーサリアム、後者をイーサリアムクラシックとしてチェーンを分岐させることになりました。

このようにビットコインやイーサリアムなど多くの仮想通貨では、コミュニティ内で合意が不可能なほどの意見の対立が生じた際に、ハードフォークによってコミュニティを分裂させることが可能です。

意見の対立が起きてチェーンが分岐した際に、マイナーは自分が支持する方のチェーンでマイニングを行うことで支持を表明します。分裂したコミュニティはそれぞれ、支持する方のチェーンを伸ばし、支持する方の通貨を使用することができます。

XRP Ledgerで対立が生じた場合

一方、XRP Ledgerではそのようなチェーンの分岐やコミュニティの分裂は出来ません。

XRP Ledgerではアップグレードや修正案に対して8割以上のバリデータが賛同すれば適用、しなければ却下という2択しかありません。例えば、XRPコミュニティの意見を7対3に分断するような変更案があっても、その変更は決して適用されません。

対立が収まらず、コミュニティを分けるしかなくなったとしても、どちらかが全く新たな台帳を作るしかありませんないのです。XRP Ledger自体はオープンソースなのでコードは同じだとしても、台帳は0から始まり、もとのXRP Ledgerとは全く関係ないものになります。

タイトルとURLをコピーしました