分散型取引所(DEX)とは何なのか?この取引所を利用して出来ることやデメリットを詳しく紹介します。

仮想通貨に触れていると「DEX」という言葉を耳にします。これは何ですか?

特定の中央管理者のいない取引所のことを指しますよ。逆に管理者のいる取引所を中央集権取引所と呼んでいます。まずは両者について説明しましょう。
DEXとは?
DEXとは「Decentralized EXchange」(分散型取引所)のことを指します。
取引所とは、仮想通貨を売買することができる場所です。分散型取引所に対して、非分散型取引所(中央集権取引所)が存在します。
非分散型取引所(中央集権取引所)とは?
中央集権取引所は、DEX(分散型取引所)が登場するまで一般的だった取引所です。管理運営する者や組織が存在します。
現実世界の証券取引所をイメージすると分かりやすいでしょう。証券取引所などの中央集権取引所では、取引所自身が組織として取引を管理しています。
専門知識が不要のため、証券会社や銀行に対し資金を預けるイメージで利用しがちですが、法的に担保されていない取引所が多いことに注意が必要です。これが何を意味するかというと、内部的なハッキングや、取引所の利益になるための自由な運営方法が可能だということです。
つまり、取引所は従来の証券取引所のような、法律で明記された金融取引を行う場所ではなく、ユーザーの代わりに仮想通貨を管理する企業であるということです。
中央集権取引所の例
既におなじみの国内の仮想通貨取引所である「bitFlyer」や「Coincheck」は中央集権取引所にあたります。
企業が取引所を運営し、その取引所でウォレットを代わりに管理してくれています。企業がまとめて管理してくれるので楽ですね。企業側がセキュリティを万全にしてくれることで、自分自身は取引所にログインするためのIDとパスワードだけ保管していれば大丈夫ということです。
しかし、企業側がセキュリティを重要視していない場合は、安全性を確保することが出来ません。例えば、2018年1月26日にコインチェック社から580億円相当のNEMが盗難されました。企業がハッキングされてしまえば、あなたの資産も危険にさらされることになります。
中央集権取引所に預けることで発生する「リスク」とは
秘密鍵が盗まれるリスク
コインチェック社でNEMが盗まれた事件では、秘密鍵がハッキングにより漏洩したことで、最終的に盗難された580億円以上のNEMを回収することが不可能な状態になりました。この様な事件は世界各地で発生しています。
取引所の運営都合によるリスク
取引所は営利目的の企業であるため、最終的には取引所の利益を考えます。そのため、ユーザーの資金を守るためのセキュリティに費用よりも、広告費用の割合が多くなることもあるでしょう。結果的に、ハッキングされてユーザーの利益が損なわれることも考えられます。
手数料に関する利益もそうです。中央集権取引所は運営主体の企業が利益を追求する必要があるため、手数料が必要です。手数料がゼロという取引所もあるものの、実際は別のところで費用を回収していたりします。
金融取引のように目に見える形での費用負担を行わないことは、実は大きなリスクでもあります。完全無料の取引所の場合、本来の取引価格と乖離した価格での売買操作が行われたりすることもありあります。
カントリーリスク
中央集権取引所には企業や取引所運営母体が所属する「国家」があります。
もし、所属する国家が取引所を停止する法律を作った場合、取引所に存在する仮想通貨を引き出すことができなくなります。
もちろん、国家に所属せず中央集権取引所を開設すること自体は可能です。しかし、国家に所属しないということは、住所も存在しない運営母体に資金を預けることを意味します。
そして、預けてある資金が仮想通貨としてどのような状態にあるかについては全く把握できないことになります。
その他の停止リスク
取引所は本来24時間365日可動する必要があります。しかし、中央集権取引所は人が管理しているため、停電や、倒産等様々な理由で停止するリスクが存在します。
DEXの特徴
分散型取引所(DEX)は、上記で紹介した中央集権取引所と異なり、一部の企業の利益誘導を行うような運営方法ができない仕組みになっています。中央集権取引所のセキュリティリスクを減らすことができるのがDEX(分散型取引所)です。
理由としては、中央管理者が存在しない為です。中央管理者が存在しないということは、国家に所属しない中央集権取引所に似ているようですが違います。
DEX(分散型取引所)は、国家に所属しない取引所ではあるが、秘密鍵を自分自身で管理するため中央集権取引所のようなセキュリティリスクを限りなく減らすことが可能です。
秘密鍵を自分自身で管理する結果、DEX(分散型取引所)の役割として、個人間での仮想通貨売買が可能になります。
【〇】DEXのメリット
売買手数料不要
中央集権取引所のような売買手数料は不要です。
マイニングがおこなわれることで新しいブロックが生成される際にマイナーへ提供されるマイニングフィーは必要ですが、これは微々たるものです。
マイニングフィーが存在することで、分散型プラットフォームは透明性の高い仮想通貨のブロックチェーン技術が成り立っています。
本人確認不要
自分自身で秘密鍵を管理するので本人確認不要です。つまり、アドレス等の個人情報流出も防ぐことが可能です。
中央集権取引所のリスク軽減
中央集権取引所で発生すると考えられるリスクを軽減してくれます。
通常の取引所における大きなリスクの一つが閉鎖リスクで「運営会社が倒産すれば取引所も立ち行かない」という難点があります。
DEXにおいては、そもそも運営会社が存在しないので閉鎖する心配はほとんどありません。
【×】DEXのデメリット
流動性が低い
DEX自体がまだ新しい取引所のため、そこに参加しているユーザーが少ないのが現状です。結果的に取引の流動性が低くなります。
流動性が低いということは、一般的に人気のある通貨を売却しようと思っても購入してくれるユーザーがいなかったり、購入しようとしても売却してくれるユーザーがいないということを意味します。これを板が薄いなどと言ったりします。
また、取引できる通貨ペアも少ないです(通貨ペアとは、取引できる仮想通貨の種類のことを意味します)。
一部手数料が発生
本来、DEX(分散型取引所)は、では手数料が発生しません。
しかし、過渡期である現在は、入出金等で手数料が発生します。それでも、中央集権取引所に比べると遥かに低い手数料です。今後は、さらに手数料を低くするプラットフォームが現れる流れになっています。
また、現在のDEXは多くがイーサリアムをベースに作られているので、イーサリアムのシステムであるスマートコントラクトというものを利用します。
このスマートコントラクトが、DEXの取引所を稼働させるのに必要なものなので、スマートコントラクトを利用するための手数料が「GAS」と呼ばれています。
この手数料は具体的にはイーサリアムで支払うこととなりますが、一回の売買で0.0003ETH程度はかかるようです。(2020年7月28日現在のレートで約9.9円)
自己責任
秘密鍵の保管から、取引に至るまで完全に自己責任で行う必要があります。運営のサポートも受けられないので注意しましょう。
DEX(分散型取引所) | 中央集権型取引所 | |
---|---|---|
管理者 | なし | 取引所 |
秘密鍵 | 自分で管理 | 取引所が管理 |
本人確認 | なし | 必須(海外は不要のところ有) |
取引手数料 | スケーラビリティ問題の影響で変動 | 一律 |
出来高 | 少ない | 多い |
基軸通貨 | DEX上の通貨 | 法定通貨やBTCなど |

DEXと従来の取引所(中央集権取引所)について違いを説明したけどどうだったかな?

DEXではユーザー同士が直接取引できるんですね。仲介業者が誰もいないから、すべてが自己責任になるけれど、その代わりに多くのリスクが回避できるんですね。

そうですね。中央集権取引所には、管理を丸投げできるメリットがありますので一概にリスクばかりとは言えません。
次にDEXの取引所をご紹介しましょう。
DEX(分散型取引所)の事例紹介
0x protocol(ゼロエックスプロトコル)
「0x Protocol」は、イーサリアム上で開発・発行されたアセット(ERC20あるいはER721トークン)のP2P取引を行うためのプロトコルです。
注文を出すメイカー(Maker)が取引相手を既に知っていれば二者間で直接取引が行われ、そうでなければオーダーブックを提供する主体「リレイヤー」によってマッチングが行われます。一般的なDEX(取引所)として位置付けられるのが、リレイヤーです。
0x Protocolにおける取引のマッチングはオフチェーンで行われ、マッチングした結果のみをオンチェーンに書き込むことで、スムーズな取引と手数料を抑えることができる取引所になります。
また、Kyber Network(カイバーネットワーク)と同じく決済API機能が備わっており、人気のDEX(分散型取引所)のひとつとなっています。
KyberNetwork(カイバーネットワーク)
「KyberNetwork」は、イーサリアムのブロックチェーン上に構築されたトークンを交換するためのプラットフォームです。ERC20トークンの交換が可能であり、「Reserve」と呼ばれるプレイヤーが、ネットワークに流動性を供給しています。
流動性を供給する際には、KyberのネイティブトークンであるKNCを手数料として支払う必要がありますが、Reserve側はスプレッドからの手数料収入を得られるので、ネットワークに流動性を供給するインセンティブには配慮されていると言えるでしょう。なお、KyberNetwork上の取引量は、DEX全体の18%程度です(2020年2月18日現在、DEX中トップ3)。
Kyber Network(カイバーネットワーク)は決済API機能という、例えばイーサリアム以外の通貨で支払いをしても、自動でイーサリアムに換金してくれる機能を備えています。
そのため、イーサリアムを持っていないユーザーもイーサリアム限定のICOに参加することができるようになるなど、ICOへの参加が非常に便利になるのです。
また、KyberNetworkは、様々なアプリケーションとの統合を意識して構築されており、85以上のウォレットやDAppsのペイメント機能、Defi系アプリなどに統合されています。
IDEX(アイデックス)
「IDEX」は、中央管理者が不在でP2Pで仮想通貨取引を行うことが可能な仮想通貨取引所です。中央集権取引所とは違い、国の規制に影響されにくく、分散型ウォレットで保管されるため、セキュリティ性が高いことが特徴です。
IDEXは、イーサリアムのブロックチェーンを利用しており、ETHベースのトークンを取引することが出来ます。独自のトークンAURAなども発行しており、取引に応じたステーキングなどもあります。
まとめ
DEXは中央集権ではなく、みんなで分担して管理して、「公正かつ安全な仮想通貨取引」をできるようにするために開発されました。

この考え方は仮想通貨が生まれる背景となった「非中央集権」の考え方そのものですね。
実際に、DEXには非中央集権ならではの独自のメリットがあり、利用する価値は間違いなくあります。まだまだ改善点はありますが、これからの仮想通貨取引を牽引していく可能性は十分にあります。